イベント概要
イベント:「未来2019」「未来スマートシティ・チャレンジ」説明会・シンポジウム
日時 :2018年7月31日 13:30~17:00頃
会場 :ベルサール神保町アネックス
主催 :Incubation & Innovation Initiative (III)
7月31日に開催された「未来2019」「未来スマートシティ・チャレンジ」説明会・シンポジウムのイベントレポートを公開いたしました。
日本最大級のインキュベーション/アクセラレーションプログラム「未来2019」が始動。異業種連携は日本経済成長の起爆剤となりうるのか?
株式会社日本総合研究所が株式会社三井住友銀行と共に設立した 異業種連携による事業開発コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative (III)」では、社会にインパクトを与えるビジネスの創造・成長をサポートする日本最大級のインキュベーション/アクセラレーションプログラム「未来2019」を運営する。スタートアップや既存企業のカーブアウト(事業分離)、これから起業する挑戦者をサポートし、あらゆる企業・投資家等をつなぎあわせることでイノベーションの実現を目指す本プログラム。
プログラム開催の背景や目的を説明し、また、オープンイノベーションに取り組む官民のゲストスピーカーが登場し、活動を振り返った。
会場は、ビジネス創出に関心を持つ、多種多様なビジネスパーソンが数多く出席。登壇者の声に耳を傾けた。
セッション1. 事業開発コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative (III)」が取り組む「未来2019」実施の目的と狙いとは?
セミナーの冒頭に登壇したのはIII/未来 統括ディレクタ東 博暢氏。III(トリプルアイ)発足のきっかけと、IIIの取り組み、「未来2019」について説明した。
■III(トリプルアイ)とは
Incubation & Innovation Initiative(III)は、 日本の成長戦略の基盤となる先進性の高い技術シーズやビジネスアイデアの「事業化」を支援し、 日本経済の活性化に貢献することを目的として、株式会社日本総合研究所が株式会社三井住友銀行と共に設立した 異業種連携による「事業開発コンソーシアム」。
■未来2019とは
「未来2019」はIII(トリプルアイ)が主催するインキュベーション・アクセラレーションプログラムである。オープンイノベーションによって日本から新たな価値を創出していくことを目指す。同プログラムは第2期目を迎え、アイデアや技術の事業化を目指すイノベ―ターたちにビジネスプランを募集し、イノベーションの支援を行う。
→プログラムの参加メリット
1.専門家によるメンタリング(ビジネスプランの作成・事業開発に向けたアドバイザリー支援 等)の実施
2.IIIコンソーシアムメンバーやベンチャーキャピタル、その他関連する企業・団体等とのネットワーキング・マッチングの実施
3.大企業やベンチャーキャピタル等に向けたピッチや展示会、商談会の機会提供
4.現地アクセラレータの紹介等の海外進出支援
5.事業開発のための資金サポート III GAP GRANT “MIRAI”(総額1,000万円程度)の活用(優秀チームのみ、1件上限200万円を予定)
―次世代に残るイノベーションを異業種連携でスピーディーに創出していきたい。
「消費者、ユーザーからすると世の中は日々便利に、スマートになってきている。一方で企業側からみるとかなり複雑な状況にある。これまでは同じ製品、同じサービスを世に出していればよかったものの、そうはいかない。厄介な時代に突入している。」と東氏は話す。直近1世紀ほどの製品サイクルを見ても分かる。これまでは数十年スパンで世の中は変化してきたが、ネットの到来以降、2・3年周期と目まぐるしいスピードで変化している。
この状況下の中で、日本企業が生き残るためには、やはり異業種で新しい価値を創出していくことが必要不可欠である。IIIでは1社では成し遂げられないイノベーション創出のプラットフォームとして、イノベーション支援に取り組む。IIIの活動としては第4期目となり、多方面でのイノベーション支援団体との協力体制を結んでいる。最近では先進的な活動を推進する多数の自治体も参画していることから、官民連携により、大規模なプロジェクトとしてイノベーション創出が可能となり、これまで以上に日本経済の活性化に貢献すると期待されている。
セッション2.「統合イノベーション戦略「創業」論点」~研究成果や技術シーズをイノベーションに結び付けるために〜
▲内閣府 科学技術・イノベーション担当 企画官 石井 芳明 氏
優れた研究・技術がイノベーションに結び付かない事が長年課題とされてきており、スピーティーで小回りのきく「研究開発型ベンチャー」はその導管となることから、内閣府も大学発ベンチャーを始め様々な施策を実施してきた。セッション②では内閣府 科学技術・イノベーション担当 石井氏より、現状の課題と政府機関による取り組み事例、今後の施策などをプレゼンテーションした。
―研究開発型ベンチャーの支援に注力。日本が持つ技術的潜在的強さを活かすためにベンチャーエコシステムの構築を目指す。
研究開発型ベンチャー創出・成長の明るい動きも出始めているものの、本格的なエコシステムがいまだ十分に機能していない。この状況から脱却するため、研究開発型ベンチャーに焦点をあてたベンチャーエコシステムの構築を開始している。
政府機関は90年代からベンチャー支援策を打ってきたが、石井氏は、「ここが勝負ところだ。」と言う。これまで各省庁バラバラのベンチャー支援をしてきたが、今後はそれぞれの支援施策を繋いでいき、効果を生み出す事を重要視していく。政府の中では「ベンチャー・チャレンジ2020」を策定し、各省庁との連携を計り、起業家教育や日本ベンチャー大賞、大学発ベンチャー表彰等の表彰制度、資金的支援、事業展開支援など行っている。しかし、これらの取り組みが行われているものの、諸外国に追いついていないのが実状であるという。日本の強みを活かし、解決に向けてさらなる取り組むことが必要である。
では具体的にどのような施策を打っていくのか。短期的取組・中期的取組に分けて対応していくという。特にこれから注力してく部分としては、技術がでてきて立ち上がる際のGAPファンドやベンチャー支援機関の取組の強化である。また、成長する際に大きな資金が必要となる場面では、やはり官民ファンドの出番である。そこで、官民ファンドのコンソーシアム化、資金分配機関・支援機関との協力協定を行っていく方針だ。
他にも、事業展開支援の強化、キャリアパスの見直しや、技術・イノベーションの進展に合わせた規制・法制度の見直しメカニズムを導入していく。
さらに石井氏は、研究開発型ベンチャー創出の成功事例を創り、世間から「スタートアップは重要だ」という認知をされることが重要であると話す。その中で「J-Startup」プログラムは誕生した。
―世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し、革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供することを目的としたプログラム、「J-Startup」がスタート。
J-Startupプログラムでは、有識者が推薦した成長スタートアップ企業を「J-Startup企業」として選定し、大企業やベンチャーキャピタル、アクセラレーターなどの「J-Startup Supporters」とともに、海外展開も含め官民一丸となって集中的にサポート。また、関係省庁とも連携し、プログラムを推進している。推薦された約1000万社のスタートアップの中から厳しい審査によって92社を対象企業に選定している。
「J-Startup」プログラムを含め、今後未来との連携を積極的に進めていきたいという。この国のイノベーティブなポテンシャルを活かし、社会実装していけるような取組みを推進していきたいと石井氏は話を締めくくった。
セッション3「未来Alumni/J-startupsの活動報告」
▲株式会社エイシング 代表取締役CEO 出澤 純一 氏 (未来2017/J-Startups)
株式会社エイシングは世界を変える新型独自AI技術の事業展開を行う岩手大発の研究開発型ベンチャーである。製造業に特化した機械への組み込みを前提とした、AIアルゴリズムを開発・提供している。近年、画像認識・機械制御・ビッグデータの解析などさまざまな分野で活用され始めたAIであるが、パラメーター調整や計算コストの課題があるのが現状である。同社はAIアルゴリズムの開発に着手して15年。エッジデバイスや組み込みシステムなどにも活用できるAIアルゴリズムを生み出し、コンピュータ自身がリアルタイムで学習し、精度の高い予測ができる、機械制御発の世界最速AIプログラムである。メンテナンスフリーで軽量実装、高速学習、高精度、安定動作を実現しており、IoTエッヂデバイスでのリアルタイム学習が可能。2017年2月には 「未来 2017」最終選考会にて日本総研賞を受賞した。今後さらにソリューション提供領域を広げ、東北初のユニコーンを目指す。
▲株式会社カウリス 代表取締役 島津 敦好 氏 (J-Startups)
デジタル化・IoT化にともない、サイバー犯罪が増加の一途をたどり、インターネットサービス運営事業社の3分の1以上がなりすましによる不正アクセスの被害に遭遇している。株式会社カウリスは、この課題に対して、“本人らしさ”をベースにした独自の判定ロジックで攻撃者のなりすましによる不正アクセスを未然に防ぐ法人向けクラウド型不正検知サービス「FraudAlert(フロードアラート)」を開発。アクセスに使われた端末、IPアドレスなど、約200ものパラメーターをもとにアクセス者がユーザー本人であるかどうかを判断し、「いつもと異なる」時のみ追加認証を求める。同社の強みは、導入コスト。従来のセキュリティ導入費に比べ100分の1となる。
すでにメガバンクをはじめとする金融機関も導入している。
セッション4.パネルディスカッション ~「大企業と組む時の連携のポイント」と「J-startups認定スタートアップに聞く、政府との連携でこれから期待する事~
▲【写真左】(モデレーター)III/未来 統括ディレクタ 東 博暢氏
【写真左から】(パネラー)
・経済産業省 経済産業政策局 新規事業創造推進室 総括室長補佐 黒籔 誠 氏
・内閣府 科学技術・イノベーション担当 企画官 石井 芳明 氏
・株式会社カウリス 代表取締役 島津 敦好 氏
・株式会社エイシング 代表取締役CEO 出澤 純一 氏
東氏:それでは早速、エイシングの出澤さんから、ご自身の経験をふまえてご意見いただきたいです。
出澤氏:はい。政府との連携でこれから期待する事としては、ビザ発給要件の緩和です。海外から人材を入れたいと思う時にやはりビザ問題がでてきます。もし、えこひいきしてもらえるならJ-startups認定企業に海外から優秀な人材が来る場合はビザの発給要件を緩くしてもらう事ができればありがたいですね。
東氏:ありがとうございます。そのあたり内閣府の石井さん、何か策などはありますか?
石井氏:そうですね。企業に関しては起業家ビザ・スタートアップビザをこれから動かしていく予定です。あとは高度人材という部分で、特に海外人材に対しておっしゃる通り、もう少しうまく動かせられる仕組みを構築できればと考えています。
東氏:それでは、次にカウリス島津さんにお聞きしたいのですが、レギュラトリーサンドボックスの活用に関して今まさに経済産業省さんと連携している最中ですが、大企業との連携を含め状況いかがですか?
※サンドボックス
…AI、IoT、ブロックチェーン等の革新的な技術の実用化の可能性を検証し、限定された参加者・期間・地域において実証を行い、実証により得られたデータを用いて規制制度の見直しに繋げる制度。
島津氏:大企業さんとの連携に関して、最近、電力会社さん数社とお話をさせてもらっています。社会のインフラを守るひとつとして、電力を供給するというのももちろんですが、地域の不正な取引を消していくというも挙げられます。電力事業法など規制も厳しく、連携として非常に難しいですが、なんとかしていきたいと思っていたところJ-startupsに認定されて非常にやりやすくなり、ありがたかったです。
60年以上続く電気事業法に比べ、個人情報保護法はIT・テクノロジーの方から改正がかなり進んでいます。インターネットがない時代の法律があるからこそ生まれる不利益はあってはならないです。そこをつぶして行けるように政府の方には柔軟に動いていただきたいと思っております。
黒籔氏:私の所属する新規事業創造推進室では、スタートアップの支援と規制改革の推進をミッションとしています。例えばロボットの場合ですと一つの製品の認証をとるのに、タイプによっては4つ5つの法律の認証をとらなければなりません。それをすべてスタートアップ側でピックアップし、進ませるのは不可能だと思います。そこのサポートをするのも我々の使命ではないかと思っています。今設定されている規制も何十年も変わっていない規制も多くあり、動きにくく・不利益が生まれる場合があり得ます。そこも私たちから、変えて行けたらと思っています。
東氏:みなさまありがとうございます。このようにスタートアップや各省庁の方とも連携しながら、フラットに新しい事業を創って行けたらと思います。
株式会社日本総合研究所が株式会社三井住友銀行と共に設立した 異業種連携による事業開発コンソーシアム「Incubation & Innovation Initiative (III)」では、課題の解決や新しい価値の創出によって、まちをより魅力的にするため、アイデアや技術の事業化を目指す「未来Smart City Challenge」を始動。前編で紹介したIII主催のプログラム「未来2019」と同時始動の同プログラムでは、「まりづくり」にフォーカス。まちの課題解決・価値創出、未来のまちづくりに挑戦する同志を募ったプログラムである。2018年7月ベルサール神保町アネックスにおいて開催された。プログラムの説明会に留まらず、官庁・自治体・大企業・スタートアップと、さまざまな立場のゲストのトークセッションが聞けるシンポジウムとなっており、会場はイノベーションに関して、情報感度の高い参加者で会場は熱気に包まれた。
■スタートアップと共に創る未来のまち。未来スマートシティ・チャレンジとは?
今年からスタートした同プログラム。再開発ラッシュ、またオリンピックに向けた都市開発が進む中、III(トリプルアイ)でもスタートアップをはじめとする、まちづくりに興味・関心のあるイノベ―ターたちと連携し、新たなまちを創造していく。これまでにあった従来の都市再生プロジェクトではなく、新しいプログラムとするため、まちづくりのステークホルダーを広げている。まちづくりを計画する際、通常自治体、土木建設、ゼネコン、不動産、建設コンサルなどが従事し、なかなかスタートアップ、ICT事業者、情報通信事業者、大学研究機関などの声を拾い上げる場がなかった。これからのスマートシティでは渋滞やニュータウンの高齢化問題等、まちの抱える課題を解決するために、データ活用が必要になるなど、スタートアップのアイディアが必要不可欠となっている。そのため、まちづくりを計画する段階から入ってもらい、新たなまちづくりのエコシステムを構築することとなった。その体制が整った今、本プログラムが始動した。多種多様な人が住み、多くのモノが動き、そして膨大なデータが生み出される「まち」には混雑や無駄、危険など多くの課題も存在する。プログラム期間では課題の抽出から、意見交換の場も設け良いアイディアに関しては実証実験を行い、事業化していく。III/未来 統括ディレクタ東氏は、「これまでにない、規模感の取組み。スタートアップもこのプログラムからまちづくりにジョインするきっかけとなってもらいたい」。とアピールした。
セッション5.ものづくり「豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」を起点としたまちづくり ~スマートシティの実現に向けて~」
▲清水建設株式会社 LCV事業本部 ソリューション営業部 部長 溝口 龍太 氏
清水建設株式会社では2017年10月に竣工後の施設運営管理サービスを提供するBSP(Building Service Provider)機能、インフラ運営機能、エネルギー運営機能を集約した事業本部「LCV事業本部」(※)を新設した。建物のライフサイクルにわたる運営サービス分野、PPP・コンセッションに代表されるインフラ運営分野、再生可能エネルギー発電分野などで大きな潜在需要があると見込み、その価値を最大化させるために同社の技術やサービスを提供するほか、事業参画や投資も実施する。
(※)LCV…Life Cycle Valuation(ライフサイクル・バリュエーション)の略
―豊洲の街をイノベーションが溢れる超スマートシティへ。
ミッションのひとつに「豊洲のまちづくり」がある。同社はおよそ30年以上前から、豊洲5丁目を中心に景観ガイドラインの作成をはじめ行政、町会と共にまちづくりに関わってきた。現在では、「豊洲六丁目4-2・3街区プロジェクト」を契機に豊洲エリアにおけるソサイエティ5.0、データ利活用型スマートシティの実現を目指している。溝口氏は「このプロジェクトは我々だけでは実現できない。異業種と連携し、様々なテクノロジーの実装を視野に入れながら取組みを推進していきたい。」と話す。また、豊洲はグリーンフィールドと言われており、未開発の大型エリアが多く残っている。様々な新しいアイディアを実装できるチャンスがあるエリアでもあるという。今後、防災、防犯、医療、コミュニティ、建物、フィンテック、モビリティ等の様々な分野から新しいサービス、アイディアを募集していき実装していきたいとアピールした。
セッション6.Startup City Fukuokaがチャレンジする超スマートシティ「Fukuoka Smart East」の目指す先は?
▲福岡市 イノベーション課 課長 的野 浩一 氏
日本のイノベーション都市として、代表される「福岡市」。的野氏も、「福岡市さんは本当に元気ですね」とよくいろんな方から言われています、と笑顔で話す。実際数字でいうと、年間約3300社もの新しい会社が福岡の地で生まれており、今後さらに人口増加も期待されることから、税収も上がりチャレンジしようという活気にあふれている。3年前から福岡のスタートアップをグローバルとつなげる活動も行っており、現在では12か国の地域と条約を結び、現地のスタートアップ支援者とスタートアップを繋げて営業先の紹介や事務所の手続きなどスムーズに行えるような環境も整えている。2012年頃から、スタートアップ政策が開始され現在のようなスタートアップエコシステムが構築させるまでに成長を遂げた福岡市であるが、今後はこのスタートアップの力を「まちづくり」に持っていきたいと話す。
――世界最先端のスマートシティをスタートアップの力で実現する
これからまちづくりプロジェクト」が進められる箱崎エリアは、広大なエリアを持ち、交通利便性もあり、これまで以上に自由な発想で、まちづくりができるポテンシャルを持っている。「まちづくりを推進していく中で想定もしていなかった、既存のルールや法律が壁となる事が大いにあります。そこを我々の力で変えていきます。」と的野氏は言う。福岡市は日本で唯一の国家戦略特区であり、新しいテクノロジーを使おうという時に、規制緩和の枠組みを持っている。福岡・箱崎には、ここでしかできない条件が揃っている。こういった新たなまちづくりをIII「未来」の力も借りていきたい」と話を締めくくった
セッション7.パネルディスカッション「スタートアップと連携した新たなまちづくり」
~データを活用して新しいまちを設計するために今後産業データや情報銀行等の新たな枠組みを活用するべきなのか徹底議論~
▲【写真左から】(モデレーター)III/未来 統括ディレクタ 東 博暢
(パネラー)
・株式会社バカン 代表取締役 河野 剛進 氏
・清水建設株式会社 LCV事業本部 ソリューション営業部 部長 溝口 龍太 氏
・株式会社三井住友銀行 データマネジメント部 副部長 宮内 恒 氏
・福岡市 イノベーション課 課長 的野 浩一 氏
▲株式会社バカン 代表取締役 河野 剛進 氏
「いま空いているか、1秒でわかる優しい世界」を実現するため、株式会社バカンでは、センサー・カメラであらゆる状況をリアルタイムでセンシングし、空席情報配信サービスを行う。一目でわかるデジタルサイネージを設置し、本サービスを活用することで、商業施設や店舗は来店客を待たせることが減り、集客効果の拡大や顧客満足度向上が期待できるという。
―構想段階から民間と行政が連携していかなければ、スマートシティは活かされない。
東氏:それでは早速、清水建設の溝口さんにお聞きしたいのですが、行政とのやりとりの中で注意すべきポイントや課題など感じていますでしょうか?
溝口氏:先日、ドイツの4都市に視察へ行ってきたのですが、どの関係者も口を揃えていうのが「都市計画とインフラの交通計画を合わせた形で街を創っていかないとワークしない。」という事です。
1町村だけだと完結せず、他の町村、また県にも調整していかないと上手くいきません。この調整こそ、国の力をかりないとなかなか前に進みません。まちづくりを始める前に行政と民間が連携して取り組み事が非常に大切だと思います。
東氏:溝口さんもかなり苦労されて都庁調整されとききましたが、今まさに的野さんがこれから「Fukuoka Smart East」の取組みを開始されます。行政の立場から民間やスタートアップに期待する事はありますか?
的野氏:そうですね。世界実装されているスマートシティ改革で、上手くいっている例とそうでない例を見てみると、成功するポイントは2つあると思っています。ひとつは、溝口さんもおっしゃっていましたがまちづくりを始める前に、スタートアップやまちづくりに関わる事業者に意見を貰う事です。2つめは実際使う人、利用者が手に取るまでのイメージをしたサービス・プロダクトを創っていくことです。「いいものを作ったのだけど売れません。」という相談を多くいただきます。まちづくりに関しては、特にこのエンドユーザーのニーズを想像できるかが成功するためのポイントになってくると思います。
東氏:なるほど。本気のまちづくりをするのであればかなり前から準備に入らなければならないという事ですね。その点でいうと、バカンさん、三井住友銀行さんの場合、まさに今、行政・提携企業と密な連携をとり、準備していると思います。両者からみて、今後どういう連携をやっていきたいなど、希望はありますか?
河野氏:これまで私たちがやってきていたことは、出来ているものに対していかにライトに入り込めるかというところで挑戦してきました。なので今「未来Smart City Challenge」においてこの段階からは入れていることが非常にやりやすく感じています。電源・ネットワーク一つにしても、事前にサービス導入ありきで街を設計してもらえると、新たな導入のハードルはグッと下がります。このような連携の仕方が理想だと思います。
宮内氏:今回初めて、銀行がまちづくりの初期段階から参加していると思います。
これまではファイナンスが中心でしたが、今回の参加の目的としては「都市のデータマネジメント」です。
これを銀行が担う事ができないか、もしくは共創できないかと考えています。街の情報を収集し、決済活動に繋げていきたい。デジタル化された都市のバックヤードを、我々銀行が担っていきたいと思います。
東氏:「お金」を扱っていた銀行が新たにこれまでに扱ってこなかった多様な「情報」を扱っていく。新規事業への挑戦ですね。この取組みを箱崎や豊洲で挑戦していくことになります。事例を作り、ぜひ様々な地域に広がって行けたらと思います。
以 上。