日本では、まだまだ少ない“シリアルアントレプレナー/連続起業家”。
2度目の起業に挑戦中の野口氏が、未来X(mirai cross)で2023年10月~11月の約1カ月間をかけて行った研修・メンタリングにご参加されました。
「自分が全然関係ない領域でゼロイチの事業を立ち上げる場合、アンラーン(※1)が肝要。2度目の起業準備にあたって過去に学んだことを一旦忘れ、ある程度体系だった最新の雛形にアップデートしたかった」と語る、野口氏のインタビューをご紹介します。
※1 アンラーン…自分の固定観念や過去の学びを手放し、これまでに身につけた思考のクセを取り除いて、新たな視点を受け入れるプロセスのこと。
Noguchi Arts & Contemporary 野口哲氏
決済会社と資産運用会社で勤務後、ロボット投信を起業し、売却も経験。
39歳から美大に在学しつつ、現在2度目の起業として法人用アート管理アプリの開発中。
(所属および肩書は取材当時のものです)
―ご自身のキャリアについて、お聞かせください。
新卒で大手金融機関に入社し、子会社である上場したての決済会社に配属されました。上司は現在もシリアルアントレプレナーとして大活躍されている方で、自分としては何となく金融機関に入った次第でしたが、沢山の刺激を受けまして。同僚も次々に起業していったため、自分も起業して経営をしたくなってきたのが、1度目の起業のきっかけです。
いざ起業をするなら、どこの業界が良いだろう。当時の私は手作業の多いアセットマネジメント業界が狙い目と考え、実務を勉強するためにアセットマネジメント会社へ転職しました。公募投信領域の業務を5年ほど幅広く担当した後、1社目の起業として「ロボット投信」を立ち上げ、BtoBロボアドバイザー事業を通じてクラウド上で構築した金融システムを証券会社や銀行のアプリへSaaSで提供したり、運用会社さんの業務システムでレポート作成支援を行いました。なお、途中で三井住友銀行の方の出向を受け入れたこともありました。
―どのような経緯で、三井住友銀行職員の出向受入に至ったのでしょうか。
三井住友銀行さんには、1社目の起業時に銀行口座開設から売却までの間、メインバンクとして支えて頂きました。融資でのお取引やイベント登壇などのお付き合いがある中、若手銀行員出向のお話があり、一年間プロダクト開発を中心に活躍いただきました。
なお、これとは別に三井住友銀行の経営陣のスタートアップに対する強いコミットメントを感じたこともありました。ロボット投信を経営していた時、先日お亡くなりになられた三井住友フィナンシャルグループの太田前社長に直接意見を伝えるイベントに参加したことがありまして、自分のような30代の若手にもお声がけいただいたことに、三井住友銀行の“本気”を感じた次第です。
―現在の2度目の起業、そして未来X(mirai cross)へのご参加の経緯をお聞かせください。
1社目の会社は起業7年後に売却先と吸収合併し、2社目の起業準備中となりますが、今起業を考えているのは現代アート領域です。もともと写真を観るのが好きで、いつかこの領域での事業に挑戦したいなと思っていた中、関係者の方にヒアリングを進める中で、美術品の管理はアナログ作業が多いことが分かりました。この点、1度目の起業とも通ずる部分があります。
ただ、このように自分が全然関係ない領域でゼロイチの事業を立ち上げる場合は、アンラーンが肝要と思っています。自分が学んだことを一旦忘れて、最新の雛形としてある程度体系だったものをアップデートしていかないと上手くいかないと思って活動していたところ、SNS経由で未来X(mirai cross)のアクセラレーションプログラムを知り、応募しました。
―アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)の研修の中で、印象に残っている講座は何ですか?また事業には活かせそうですか?
研修プログラム構成が、よく練られているなと感じました。
「資本政策①・②」でJ-KISSの調達シミュレーションを通じて、自分がやりたいことを実現するにはどれくらいお金が必要なのかを把握してから、「事業計画」の講座に移って計画策定を行っていく流れでしたよね。そもそも私が過去に起業した際は、J-KISSはそれほど普及していない調達方法だったので、自分も経験がなかったのでとても勉強になったんです。
また、「法律」の講座にてタームシート(※2)を森弁護士と一緒に考えることができて、起業の際にありがちなトラブルを回避するという観点で実践的なものでした。なお参加者向けにファイナンス関係のツールもご提供いただきましたので、こちらは活用していきたいなと考えています。
なお、初回の「志・リーダーシップ」でご登壇された南場さんの講座には驚きました。南場さんと直接お話しする機会を頂けるなんて、何ともありがたい経験をさせていただいたなと。
※2 タームシート…契約対象、契約方式、契約期間などのライセンス契約の内容を項目別にまとめた表のこと。
―アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)にこれから参加を考えていらっしゃる方に、何か一言お願いできますか?
アクセラレーションプログラム未来X(mirai cross)は、起業に必要なノウハウが体系立って学べるので、創業時におすすめのアクセラレーターだと思います。
研修は単なる座学に留まらず、手を動かすことで、やるべき事がどんどん具体的になっていって。特にお金については、大体これくらい必要かな…というレベルではなく、何円まで具体的に落とし込んで考える必要があったので、いつまでにいくら調達しなくちゃならないかを整理できて、研修の質が高く、実利をとれる研修でした。
新しい起業家さんに、三井住友銀行さんがスタートアップ支援に積極的であることをもっと知っていただきたいですね。