※同社は最終審査会でNOK Dream Journey賞も受賞されました。
受賞企業 | TopoLogic株式会社 |
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事業概要 | 量子材料を用いた超低消費電力半導体メモリ、超高速検知熱センサ |
―改めまして、GAPグラント賞の受賞、おめでとうございます!
まずは自己紹介として、佐藤様のこれまでのキャリアについてお聞かせください。
東京大学を出て、元々は技術者になろうと日本のメーカーなども選考を受けていたのですがご縁がなく、自分には向いていないんだろうなと違う領域を探そうと考えました。その中で、たまたまコンサルという領域でチャレンジをしている人が周りに何人かいたことがきっかけで、自分も非常に馬が合うと感じ、その業界に入ることを決意しました。結果的に、新卒でマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社をし、6年間くらいを過ごしました。
―スタートアップの事業統括のマネジメントは、マッキンゼーを辞められた後に携わられたのでしょうか。
そうです。マッキンゼー時代は色んな課題に参画できる面白みはあったものの、経験を積んでいく中で、もっと自分たちの運命や行先を決めていける仕事をやりたい、事業会社側にいたいという思いが出てきました。また、私自身、マネジメントに関心があり、特にスタートアップであれば動きも早い上、自分がより様々なことにチャレンジ出来る環境なのではと考えたこと、周囲にそのような知人もいたこともあり、思い切ってチャレンジすることにしました。
因みに転職先はドローン関連のスタートアップで、当時は有人機含む開発なども社内でやっており、それなりに売上を出していました。
大学時代に航空宇宙工学を学んでいた繋がりから関心を持って参画しました。そこで事業の売上の成長や、上場に向けての準備、大規模補助金事業など、スタートアップの成長の糧になることをいろいろ経験させていただきました。
―ドローンの文脈と今やっておられる技術系の分野は少し乖離があると思いますが、創業のテーマは、働きながらどなたかと出会い見つけられた、という感じだったのでしょうか。
そうです。正直言って、自分自身はイノベーションを思いつくいわゆるアイディアマンではなく、どちらかというと、そういう人たちの夢や想いを実現する方が性に合っていると思っています。それを当事者としてやるか、コンサルという外部機関としてやるか、という違いはありますが。そして、創業のテーマとの出会いについてはまさにおっしゃる通りです。具体的には、共同創業者であり、現取締役兼技術顧問である東京大学理学部教授の中辻先生と、長年お世話になっている紹介者の方を通じて出会ったことがきっかけです。
経営者を探しているということで、何度か面談を重ねた末、技術のルーツである中辻先生の研究に大きなポテンシャルを感じ、日本発で高性能材料を用いた事業を展開していくビジネスは成功モデルになると考え、チャレンジをすることを決めました。
―取り組まれている事業について、どの様な企業様との連携をご希望されているかについてお聞かせください。
ですから、そういったところの可視化に自分たちは貢献出来るし、もっともっとニーズが広がっていくと思っています。また、EVなどは定期的に車が燃えてしまった等と話題になりますが、このようにまだまだ防げていない故障が新しい製品にはいっぱいあります。そういったところにも僕らの技術が将来入ることによって、そのような事故を未然に防ぐことにも活用することが出来ます。このように、現在のセンシング技術では解けない又は解きにくい課題が解決できるところが沢山あると考えています。
―今現在のご連携先で、公に名前を出して良い企業様などはありますでしょうか。
いずれもまだ公表はできませんが、弊社技術を用いたセンサの製造試験を始めているお客様もあります。今現在ですと、国内では5~6社ほどPoC等の連携をさせていただいており、ディスカッションしているところも含めると10数社あります。その中には、グローバル展開されているような企業様も含まれております。
―未来X(mirai cross)にご参加いただいた、きっかけについてもお聞かせください。
弊社の株主であり、前職の先輩でもある方からの紹介で知りました。基本的に、我々の技術は世の中のコンシューマー向けに提供するものではなく、大手企業様の製品を分解していくとその中に入っているというものです。未来X(mirai cross)には大手企業様も多数参加されており、そういった企業様と繋がり、ネットワークを強化していくことが重要だとの思いから、良いきっかけになればと参加させていただきました。
―御社のHPなどを拝見すると、名だたるビジネスピッチに沢山出ておられる印象ですが、それでもなお未来X(mirai cross)にご参加されたのは、どのような背景があったのでしょうか?
やはり色んなところに出ていくと、皆さんそれぞれコミュニティーを持っていることに気が付きます。例えば、ここのコミュニティーに出ていってもこの企業さんにはアプローチ出来ない、というのは結構あります。広く色んな人に知って頂いて、そこから芽が出る幅を広げるというのが今の私の仕事だと思っており、その観点からも色んなところに顔を出そうと思っている次第です。
―ご参加いただいた研修コンテンツの中で、特に印象に残ったもの、その理由は何ですか?
まず、ITPCの潮さんやSMBCベンチャーキャピタルのメンタリングセッションですね。資金調達のときの注意点など、なかなか自分では勉強しても得られない、手触り感のあるご意見やアドバイスを沢山いただくことができました。
また、渋谷のhoopsで開催して下さった研修にも何度か参加をしました。研修という場自体もそうですし、同じような悩みを持ったスタートアップの方々と直接交流が出来る点も良かったです。特に印象に残っている研修としては、SMBCベンチャーキャピタルの資金調達に関するセッションです。
ディープテックの領域は、現状どうしても、日本のベンチャーキャピタルが慣れている投資の規模・フェーズとズレてしまいます。アーリーステージでキャッシュが必要となってくるので、そういった点をどのように考えていくか、投資をする側のトレンドについて、日本においてアーリーステージにも関わらず巨額の投資を獲得したスタートアップの事例についてなど、直接ディスカッションをさせていただけたことで、大変理解が深まりました。
おかげ様で、弊社も先月末に資金調達が終わりましたが、どういうコミュニケーションを取ったら良いかなどを含めて、そのプロセスの中でも、研修で学んだことを活かすことができました。売り上げがほぼゼロの状態で、この規模感の投資(調達額7億円)というのはまさにその成果の一つだったと思っています。
―最終審査会では「NOK Dream Journey賞」を受賞されましたが、NOK様とはその後どのようなやりとりをされていらっしゃいますか。
今回の賞について、社内報で展開していただけると伺っており、先方社内の技術者にもこの技術の情報が届くようになっています。結局こういった技術は、それを必要とするかどうか、目利きが出来る技術者の目に届かなければ、「じゃあこれを何に繋げようか」という話にはなりにくいのが現状です。
私たちも、オープンイノベーション推進部と話だけして終わることは多いのですが、半年後くらいにどこかの技術会などに出た際に、同じ会社の開発部でそこから話が進むなどのケースが結構あります。ですから、このような形で色んな技術者に知っていただけることはありがたいと思っています。
―GAPグラント受賞のご感想と今後の用途や活用方法についてお聞かせ下さい
弊社の技術のように、理解が難しい技術についてもしっかりと評価してくださり本当にありがたいという感謝の気持が大きいです。使い道としては、開発に活かして、より早く製品化できるように、試作等に使おうと思います。どうしても開発にコストがかかる製品ではあるので、1円でもキャッシュを上手く使うというのは喫緊の課題であり、1円でも多く使える状況を作ることが私の仕事だと思っています。
―未来X(mirai cross)にこれから参加を考えている方へのアドバイスはございますか?
非常に勉強になる、多くの方とネットワーキングできる機会だと思います。特に起業家に重要なのは、持ち前のスキルと技術に加えて、醸成するネットワークが重要と思いますが、後者について拡大できる良い機会だと思います。我々も、銀行の営業の方に「こういうところに対してこういう提案をしてみませんか」みたいな話をしていただけることはたまにあったりするのですが、ここまで大々的に、0ベースからつきあっていただけることは中々ありません。特に、御行のような規模の銀行様でそういった機会を得られるというのは、あまり多くありません。そこに対して、ある意味フェアに、事業の構想が良ければ見て頂けるというのはものすごく面白い機会をいただいたと思っています。
その上、メンタリングセッションや講座など、自社の関心の高いところを中心に、柔軟に参加させていただける点も動きやすいですし、セッションをオンサイトでやっていただけたこともありがたかったです。他のピッチイベントではそもそも研修などは無いことが普通ですし、メガバンクがバックにいて一緒に動いて下さったり、色んな企業を紹介して下さったりすることなども基本的にはありません。そこは、私の視点からすると他にはない大きなメリットだと感じています。
―そのように仰っていただけて、我々事務局としても大変励みになります!ぜひ今後も、未来X(mirai cross)を通じて得られたご縁をきっかけに、各所とご連携を深めていただければと思います。
本日は誠にありがとうございました。